第7章 一人目の闇 ~3~
果てがないように思えるサバクを、延々と進んでいくと
錆びれて、もう使い物にならないような自動車が、大量に転がっている荒れた地へと出た。
気味の悪さと、錆びた鉄の匂いが鼻につく。
こんなところになにかあるのか。
ルイはそう思っていたが、声には出さずにいた。
なんとなく、バレットの顔がひきつっていたからだ。
誰しも触れられたくない過去の、一つや二つはある。
バレットは、その中でも、最も苦しい思いと戦っているのだ。
もし、私があの事と、正面から向き合った時、
私はちゃんと存在しているのだろうか。
頭に浮かんだ嫌な考えを消し去るように、ルイは頭を振る。
今、そんなことを考えても、何も始まらない。
進んでいた足を止め、砂埃で霞んだ空を見上げ、
心を入れ替える。
上手く車を避けながら、さらに奥へと進んでいくと
思いもよらない人物に、一行は出会うこととなった。
それが、吉と出るのか凶と出るのかは、神のみぞ知ると言ったところだろう。
先程までルイの見上げていた空に向けて、銃を放っている男がいた。
その銃は、男の失われた左腕の代わりとなって、機能を果たしている。
その機能は、誰かに求められるものではない。
彼自身が、満足するために備えられた機能。
その象徴といったように、彼の顔は、
苦しみに歪んだような、
満足感に恍惚としたような、そんな表情だ。
「…ダイン…おまえなのか?」
恐る恐るといった様子で、バレットは男に声をかけた。
その声に反応するかのように、男は上げていた顔を一旦下げ、そして
目の前にいるバレットを見据えた。
「なつかしい声だな…」
銃を放っていた彼とは思えない、穏やかな声だった。
「忘れようにも忘れられない声だ……」
そう言いながら、男…ダインは、かつての親友であったバレットへ、足を引きずりながら近づいていく。
そして、ある距離まで近づくと、ダインは立ち止まる。
「いつか会えると信じていた…オレと同じ手術を受け どこかで生きていると…」
かつての親友と会えた喜び。
それが読み取れるような表情を、バレットはしていた。