第6章 一人目の闇 ~2~
バレットではない、片腕に銃を持つ男。
それは、バレットのかつての親友
ダインという男だった。
家族を持ち、真面目で誠実な男だったダイン。
とても、ゴールドソーサーでの事件を起こしたとは思えない人物だったそうだ。
そんな彼が、ここまで狂気に取り憑かれてしまった理由。
その理由は、4年前にコレル村を襲った悲劇が関係している。
4年前、バレットとダインの二人が、興味本位で、建設されていたコレル魔晄炉を見に訪れている間に悲劇は起こった。
二人が村を出ている間に、神羅の軍が、村を襲ったのだ。
もし、二人が村にいたのなら、なにか違ったのかもしれない。
しかし、その場に二人はいなかった。
コレル村の村長が二人に知らせに来たとき、すでに村からは火の手があちこち上がっていた。
二人の生まれ育った場所であり、二人の知っている小さな世界の全てだったコレル。
目の前で燃えている村が、コレルだとは認めたくない自分がいることに、二人は気づいていた。
ようやく、脳が「この出来事は現実だ」と認識したとき、
バレットは、
燃え盛る炎をただ呆然と見つめ、嘆くことしかできなかった。
だが、ダインは、「みんなが待ってる」
そうバレットを勇気付け、いち早く村に戻ろうとしたのだ。
けれど、そう簡単に物事は上手くいかない。
神羅カンパニーの兵器開発部門統括であったスカーレット。
彼女の率いた軍が、二人の行く手を阻んだのだ。
雨のように降り注ぐ、容赦のない銃弾。
必死で身を守っていた二人だったが、バレットが油断した一瞬を、狙われた。
バレットに銃弾が命中することはなかったが、バレットをかばったダインは、衝撃で弾き飛ばされ、崖から落ちかけてしまう。
間一髪で、バレットはダインに手を伸ばし、ダインもそれにしがみついた。
バレットは落ちかけたダインを引き上げようとする。
しかし、
唯一つながっていた二人の腕を
無慈悲にも、放たれた銃弾が貫通した。
離れた二人の手。
ダインは、バレットを掴んでいた手を、見つめながら
苦しみと、悲しみと、痛みと、死の恐怖と
神羅に対する憎しみ
全てが入り混じった表情で、谷底へと落ちていった。