第14章 事案
「追ってきた?」
「はは、驚きますよね。だって俺、貴方のこと見た日からずっとずっと、追っていたんですよ。毎日お風呂上がりにゲームして寝る。起きたらまたゲームしつつ仕事に向かって、仕事して、帰りもゲームやってましたよね。そして沢山仕事を失敗して、トイレに駆け込んで泣いてましたよね。あれ全部、俺の仕業なんですよ。貴方の泣き顔を見るのが大好きなんです。なのにある日突然仕事に来なくなって、貴方の家に行ったら何もなくて携帯だけが置かれていた。それを触ったらこの世界に来た。だからまさかと思ってずっと探してたんです。苦労しましたよ?」
彼の言っていることに理解が追いつかない。
「なんで、私の家、入れたの」
「彼氏だって大家さんに言ったら入れてくれたよ。優しかったなぁ大家さん」
早口でまくし立てられて、顔は笑顔なのに目が笑っていなくて、目の前の男の子に恐怖しかわかない。なによりストーカーとも捉えられることを言ったし混乱する。
「さぁ、今日から俺と俺の刀剣と俺の本丸で暮らそう。待ちに待った日だから盛大にお祝いしなくちゃね」
「ま、待ってください!私一言も暮らすなんて言ってないです。なんですか、いきなり」
「本部に言ってもいいんですよ?刀剣男士と性行為をしているって」
なんで、なんで知っているの?という言葉が声にならない。
私の中の秘密を知られていて冷や汗が吹き出る。
「その顔はなんで知ってるの?って顔してるね。佳奈の本丸の刀剣男士と演練に当たったみたいで、その時にうちの刀剣が凄い強かった、霊力が上すぎたって言っていたよ。だからまさか、と思っていろいろ調べたら性行為をすると刀剣男士は本来の力を発揮して桜を散らしまくるってね。でもその行為は本部機密事項だから審神者が知っているのはおかしいんだよ」
「知らない、私知らない」
背中に汗が伝って気持ち悪い。
早く逃げたいのに中条さんと、一緒にいる太郎太刀さんが立ちふさがっていて逃げられない。
「長話もなんだし、さぁ行こうか。一緒に住んで、俺の刀剣男士も力を発揮させてあげてね」
そう言った中条さんは私の顔にスプレーをかけてきた。
意識が朦朧として視界が真っ暗になった。