第112章 薬指
目を開けると傍には燭台切光忠がいた
果たして彼は監査役なのか光忠なのか分からない
「あ、起きた?」
その一言で監査役だと直ぐにわかった
「光忠を返してください。私は天涯孤独なので、私は私の人生があるので口出しされたくないです」
「そっか。でも同じことを言って命を絶って言った人間がいた。それは僕の主であり恋人だった。だから君には失敗してほしくないんだ」
「…失敗なんて実験みたいなこと言わないでください。それが失敗であれば私の人生そのものが失敗です。無能、役立たず、消えればいい、いらない、たくさん言われてきました。私の人生は元々失敗です。それに私は貴方の恋人ではない。もうやめてください」
一思いに言うと彼は頷いて去っていった
見送ることはせず、少し目眩がして掛け布団を頭まで被って、未だにまくし立てて鼓動が早い心臓を落ち着かせようとしたら何かが上に乗り苦しくなって掛け布団から顔を出した
「佳奈、良かった」
光忠がいた
「…光忠?本当に光忠なの?」
「うん、僕だよ。何か言われた?僕すごく心配で、いきなり政府から昨日の夜に連絡が来てそしたら僕と入れ替われって言われて、気絶させられてそのまま政府に居たんだ。そこで事情を聞いて、本当に僕、佳奈が何かされてないかとか、泣かされたりしてないかって心配で、過呼吸になったってさっき聞いて、本当に心配だったんだよ」
「…ごめんね、色々聞かされて疲れちゃったみたい。でも何もされてないから大丈夫だよ」
「なら良かった……あのさ、これ、少し前に街に寄って買ってきたんだ。いつ渡そうか迷ってて」
そう言いながら彼は私の左手を掴み薬指にリングをはめた
「僕とお揃い。僕の前の主の時代にはこういう習慣は無かったから知らなかったけど乱くんから教えてもらったんだ」
そう言いながら、自身の左手の薬指を見せてくれた
そこには同じデザインのものがはめられていた