第111章 個体差
「ゆっくり吐いて、吸って、落ち着いて」
目の前に座っていた彼が、私の背中をさすったが私は触らないでほしくて苦し紛れに抵抗した
這って部屋を出ようとしたら手を掴まれた
「ほら、言う事聞かないと駄目でしょ」
体を起こされて、燭台切光忠の手が私に触れ声をかけられる
それが嫌で仕方ない
そして視界が狭まり、意識を失った
別に私は人間と結婚もしなくてもいいと思っている
幼い頃はお嫁さんになって子供を産んで家庭を築いてそれが幸せだと刷り込まれていたが、大人になるにつれそんな刷り込みは私にとってはただのまやかしだった
離婚やDV、金銭問題とか色々な友人の噂を聞いてきたから結婚して子供を産むことが幸せと一概には言えない
そして燭台切光忠という刀を好きになってしまった時点で一般人から見れば異常だと思う
人の子が産めないと言われても、はいそうですかと言えばよかった
この生活が終わりを告げる時、光忠や皆と永遠の別れをしなければいけなくなった時が来た時は、私は命を絶つと決めていたから別に誰に何を言われようが私は私の思いを通す
もしも前の居た世界に戻されたとしても、私は生きていかないと心に決めている
多分、光忠に伝えたら怒るだろう
でも私の決めたことだ
この先も誰にもこの思いは告げずに墓場まで持って行くことを決めている
元の世界の両親や友人の私の記憶が消され、両親の元には知らない子がいた
私がいた場所には別の人間がいて修正されている
私は実質天涯孤独だ
政府も政府だ
人の子が産めなくなって命を絶って審神者が減ってきているなんて私にとってはどうでもいいことだ
戦況は悪化していくかもしれないが、私は違う世界から連れてこられたから、この世界に元々いる人達とは価値観が違うと思っている
答えは簡単だった