第1章 イケメンは正義
「立てるかい?」
虎を退けてくれたけど、虎に襲われて(語弊があるが)畳に仰向けになってる私に手を差し出してそう言ってくれたのは燭台切光忠だった。
「は、はい!立てます、大丈夫です!お構いなく!!」
そうは言うものの燭台切はがっちりと手を掴んできた。
「燭台切、そのへんにしておかないと主が大変なことになるぞ?はっはっは、主の顔が真っ赤だ」
「そう?僕にはそうは見えないけど……三日月さん、本当に目が老化し始めたのかな」
「燭台切?」
彼の言葉に三日月宗近の目が変わったのがわかった。意外と辛辣なことを言う一面を見てしまい、少し怖気付いた。
「…やべえって……燭台切、謝ろう、今のは謝ろう。じじいだけど謝ろう」
「主?まぁ俺はじじいだが、そうまで言われるとさすがに傷つくぞ?」
「あああ、もう、ほんっとにごめんなさい!!もうこれ燭台切が悪いんだからね」
「人のせいにするの?君は」
「すんませんっしたぁー!全部私が悪いんですね、わかりました!じゃあ、私は明日も仕事があるので部屋へ帰らせていただきます!」
そうだ、私は明日も仕事なのだ……早く帰って寝ないと大変なことになるぞ……
「帰るってどこに帰るの?主の帰る場所はここでしょ?」
「何いってんの?清光くん?」
清光くんの言葉に周りの刀剣男士は私を見つめていた。
「え?待って?待って?え?ん?私なにかおかしな事言った?」
その問にみんなは首を立てに振るではないか。
できれば横に振って欲しかったなぁという淡い期待は簡単に裏切られた。