第98章 無心と徹夜
鍛錬場が近づくに連れて大声が聞こえてくる
私とまんばちゃんに気づいた蜂須賀さんが向かってきた
「主、部屋へ戻るんだ。今の2人に近づいてはいけない」
「蜂須賀さん、ありがとう。でもあの2人の頭を冷やしてくるから待っててね」
笑顔でいう佳奈は目が笑っておらず蜂須賀虎徹は背筋が凍った
冷徹なオーラを放っていた佳奈に気づいた刀剣達はモーセの海割りの絵画のように道を開ける
その日人類ではなく刀剣達は思い出した
飲み会の席で陸奥守と和泉守を鉄拳制裁していた恐怖を
私はいがみ合って押さえつけられている光忠と髭切を見た
お互いの目は普段見た事のない目付きで、多分戦場の時の目付きをしている
2人はボロボロになっていて酷い有様だ
生憎私には気づいていない
乾いた気持ちの良い音が2発鳴り響いた
「お前ら、いい加減にしろっ!!」
普段の佳奈からは発せられることの無い低い声に刀剣達は目を丸くした
「本当になにしてんの…みんなに迷惑かけて……そんなに戦好きなら検非違使でも2人仲良く倒してこい」
フツフツと怒りのボルテージが上がり始める佳奈に山姥切が近寄る
「主、部屋へ行くぞ。体は万全じゃないだろう」
「まんばちゃん、こいつら朝まで反省するまでお互いの手首に手錠繋げて放置だよ。はい、みんな解散、解散。寝るよー」
今の佳奈には逆らってはいけないということを全員悟り、指示された山姥切は燭台切と髭切にどこからか手に入れてきた手錠で2人の手首を繋いだ
他の刀剣達も各々部屋へと戻っていった
取り残された燭台切と髭切は最後に残った立ち尽くす佳奈を見上げる