第91章 はめ込まれたパズルのピース
なんとかお粥を食べ終わって廊下に出した
人払いならぬ刀払いをしてくれているのだろうか、誰も気配は感じなかった
とりあえずお風呂に入ってゆっくりと温まった
記憶を辿ろうとした
でも出てくる記憶は辛いものばかりだ
やっぱり思いだそうとすると呼吸が乱れる
でも思い出さないといけない
グルグルと頭の中は思い出した辛い記憶で溢れかえった
耳鳴りがし始めて涙で視界がぼやける中、今まで見たことの無い記憶が流れてきた
拒絶する厚くんの刀で自分の体を突き刺して死のうとしたこと、綺麗な夕焼けの海で約束したこと、みんなでクリスマスパーティーしたこと、鍛刀運のない私が望みを叶えてあげられたこと、鶴丸の掘った穴に落ちて死にかけたこと、冬に火鉢を出して兼さんの服に引火したこと、皆に私のことを小さい時からのことを話したこと
この本丸に私が望んで自分から来たこと
些細なことも、なにもかも思い出し、この本丸に来てからのことを全て思い出した
靄がかかったようだった頭の中は、記憶が散りばめられたパズルのピースが全てはめ込まれた感じがした
鳥肌が立つ
早く誰かに知らせないとと思った
お風呂から上がって、髪は濡れたまま廊下を走った
でも誰もいなかった
「誰か、誰かいないの?」
呟くように言ってもシーンとしている
廊下に佇んでいるとまんばちゃんが目の前から歩いてきた
「!?主、どうしたんだ!髪が濡れている」
近寄ってきて畳まれた沢山のタオルを運んでいたであろうまんばちゃんが、それを置いて1枚手に取って髪を拭き始めた
「まんば、ちゃん」
声が震える
私の一言にまんばちゃんが目を見開いた
「主?」
「まんばちゃん、思い出した、全部、思い出した、私、思い出したよ、まんばちゃん」
「本当か!本当に思い出したのか?」
「全部、ここに最初に来た時のことも全部、思い出したよ」
私はまんばちゃんに抱きついた