第90章 ぶつかる目
泣きやもうとした時、私が傷だらけで石切丸さんに抱えられて助け出された時のことが脳裏に過った
拉致られてヤられた記憶が脳漿を掻き乱す
あの時の怖さとみんなが助けてくれた時のことを思い出した
「主?どうかしたのかい?」
歌仙さんの声が脳髄に響く
とても嫌な記憶だ
「…………前に、拉致られてヤられた記憶が、」
「……思い出したの?」
燭台切さんの声が脳全体に響く
「思い出し、ました。私………ごめんなさい、少し、席を外します………」
私は立ち上がってさっきの部屋へ続く襖を開けて、刀剣達に目もくれず私は自室に向かう
後ろからいろんな声が聞こえた
何を言っているかわからないくらい、ヤられた時の記憶が溢れてくる
自室に入ると閉じこもって力無く畳に座り込む
頭を抱えて次から次に断片的に酷い行為を思い出して怖くてたまらない
話で聞いていた時は他人事のように思えてたのに、記憶を思い出すと本当に自分のことなんだと思った
私は汚れてしまった
いろんな男からヤられて、この身体が自分の物とは信じたくない
襲われたとしても好きでもない男と身体を重ねていた自分が怖い
「佳奈、入っても平気かな?」
襖の外から燭台切さんの声がする
「…………っ」
涙が止まらなくて、声が出なかった
沈黙が続くと襖が開く
襖に背を向けて座り込んでいた私を包み込むように燭台切さんは抱きしめてきた
「僕は、何があろうともきみの事が、大切なんだ。君は汚れてない。大丈夫だから。本当はあの時、こう言うべきだった………」
「………わたし、わたし、っ、光忠、たすけて、」
「っ!!佳奈っ」
抱きしめる力が強くなって、私は縋り付いた
燭台切さんを光忠と呼んでしまった
少し懐かしく感じた