第88章 射抜く目
「主、入るぞ」
三日月が眠っている佳奈の部屋に声をかけ中へ入った
そこには佳奈の姿はなかった
乱雑になった掛け布団が置かれていただけだった
「主?はて、どこへ居る?隠れんぼはもうおしまいだぞ?」
三日月は部屋の隅々を見るも居ない
「三日月」
開け放たれた襖の外から山姥切が声をかける
「山姥切か」
「主は?」
「居ないな………逃げたか?」
「………探してくる」
「俺も探すとするか。皆に伝えなくても良いだろう。俺達だけで探そう」
「……それもそうだな」
何かを悟った山姥切はそう言った
2人は馬小屋から畑の隅々まで探し、梅並木の方へ向かった
少し行くと木の下に小さい影があった
「俺は戻る。あんたに任せた。こういうのは俺よりもあんたの方がお似合いだからな」
山姥切は佳奈の姿を見るとそう言って戻って行った
「佳奈」
声をかけられてドキッとした
顔を上げると三日月さんが居た
「日向ぼっこか?少し暖かくなってきたから日向ぼっこには最適だな」
私は何も言わなかった
「佳奈、逃げたいか?」
隣に座ってきた三日月さんが言う
私は地面を一点見つめるだけだった
「……燭台切は後悔したと言っていた。佳奈に言ってしまったことは取り返すことは出来ない」
「………もう、いいんです。私が居なくなれば、いいんです」
「佳奈は頑張ってる。それは皆も知っている」
「ごめんなさい、生きてて」
「主はそんなことを言う人の子ではない」
三日月さんに言われたけど私は今の私しか知らない