第86章 失踪と捜索
裏山に入ってどれくらい時間が経ったか分からない
燭台切さんに言われたことが頭から離れなくて、皆どうせ同じことを思っているんだろうとしか考えられなかった
言葉では頼れ、なんでも言えと言うけど、内心面倒臭い、記憶のない奴なんて居なくていい、もしくはどうでもいいと思ってるのかと思うと辛い
記憶をなくして皆に迷惑をかけて、拒絶されて、過去もロクな事がなくて、こんな人生なら辞めてしまいたい
父親と母親の顔なんて思い出せないけど、なんで私を産んだんだろう
産まれてきてよかったって言える事が今の私には一切ない
夜の闇に紛れるように私の心も暗く沈んで自己嫌悪に陥る
身体中が凄く痛くて、厚さんの刀で突き刺した傷口が開いたのか、服に血が滲んでいて力も抜けて、呼吸もするのが面倒くさくなって意識が朦朧としてくる
このままここで、ずっと死ぬまで目を覚まさなければいい
そうすれば、嫌な事を言われてもわからないし、邪魔者なんて思われなくても済む
皆に不快感と不愉快な思いを与えないで済む
そう思いながら地面に丸まるように横になった