第85章 アルバム
目をつぶってしまおうと思った時、起こされてベンチに座らされた
背中をさすられて、手を握られて、ゆっくりでいい、息を吐けと声がする
暫くそうしてくれて、どうにか呼吸が落ち着いた
「なぁ、何があったんだ?こんな所にきみが立ち入るなんて珍しいな」
顔を上げて私の隣に座る人を見る
金色の目をしていて、燭台切さんと重なった
その目が怖くて、俯いた
「………ごめんなさい、不愉快、ですよね………ごめんなさい、消えるので、どうか、許して、ください」
ここから居なくなれと言われるんじゃないかと思って、怖くて堪らなかった
「………………佳奈」
「っ、は、はい、すみません、ごめんなさい、わた、し、消えるから、っ許して、ください……ごめんなさい」
私は怖くて、握られていた手を振りほどいて、必死に来た道とは逆の山道になってる方に逃げる
とっさの出来事と初めて見る不安定な佳奈に、鶴丸は後を追うのが遅くなり、とうとう佳奈を見失ってしまった
後ろから追いかけてこられる気がして、舗装されていた道から逸れて、獣道を突き進んだ
ここがどこかも分からなくて、必死にただただ逃げた
途中木の根に足を引っ掛けて勢いよく転んだ
両膝が擦りむけて血が流れでる
受け身が上手く取れなくて、顔も擦りむけてどこからか血が出たけど、それでも立ち上がって走った
辺りはもう日が沈みかけていて、視界が悪くて目の前が斜面になってることに気づかず、足を滑らせて勢いよく落ちる
気力を振り絞って無理矢理立ち上がって、近くにあった大きな木の窪みに座り込んだ