第84章 馬糞は嫌いな奴に投げるのはいけない
それから馬当番が終わる頃に出陣部隊の馬が帰ってきた
出陣部隊の皆はいなくてその代わりにほかの刀剣達が連れてきたみたいだった
「大将、少し馬の気が荒いから離れていてくれ。下手したら蹴られるからな」
「わかりました」
薬研さんが私に気づくとそう言った
そして馬当番を終えて屋敷に戻ると凄く騒がしい
手入れ部屋へと誰かが大声で言っていて私はその声のする方へ向かった
血濡れの人達が多くて、江戸に行った部隊が手入れ部屋へと入っていくところだった
「山姥切、さん………ごめんなさい、私が、」
「っ主、大丈夫だ、そんなになるな。俺の指揮が甘かっただけだ、重傷1振、中傷3振、軽傷2振だ、だが練度が上限までいった俺でも、無理だった。とりあえず手入れ部屋が空いたら俺も入る…重傷者が優先だからな」
「わかり、ました」
山姥切さんと中傷の人達は部屋へと戻った
そして続けざまに出陣して行った部隊が帰ってきた
「主、んな暗い顔してどうした」
「…なんでも、ないです」
顔に傷があるたしか正国さんって言う人が話しかけてきた
「俺達は刀だ。人間じゃない。使われてこそ価値があるんだ。それに俺達の行く場は戦場だ。もっとそこに気づいてくれ。手入れすりゃ直るからな」
「正国、さん……」
呟くように言うと目の前の彼は目を見開いていた
「今、正国って言ったか!?」
「ダメでした?」
「いや、呼ばれなれてないからな………同田貫のほうがなんかしっくりくる」
「じゃあ、同田貫さんと呼びます」
「あぁわかった。主はとりあえずここから離れてろ。戦帰りの血気盛んな奴らが多いからな」
なんて言われてしまい、その場を離れて部屋に戻った
さっきの血濡れの人達が忘れられなくて
同田貫さんに言われた人間じゃないという言葉がぐるぐる頭に駆け巡って、訳分からなくなって私は体育座りで膝に頭を埋めた