第83章 優しさ
それから鶴丸さんのしたことを教えて貰って、誰がどうだったとかあの時はどうだったとか、色々面白かった
拭き仕事も終わって自室に戻ろうとしたら薄紫とグレーを混ぜたような目の色をした人と鉢合わせした
「主、お体は大丈夫ですか?」
「は、はい、なんともありません。えっと………」
「長谷部です。へし切長谷部といいます。まぁあの場で全員から名を教えられても覚えられませんよね」
そう言いながらシュンとした表情を浮かべた
「ごめんなさいっ。失礼なことして」
「い、いえ!!そんな!俺は大丈夫ですから。それにしても主は全てを忘れられてしまったのですか?演技ではないんですか?」
「…………ごめんなさい、不快にさせてしまって、ごめんなさい、私、早く思い出しますっ、ごめんなさい」
演技と言われ悲しかった
本当に記憶が無いから、そんなこと言われて辛い
ごめんなさいとまた一言言い逃げするように部屋へ戻った
悲しくて涙が出てくる
なんで思い出さないの?と頭を掻き毟った
悔しくて畳んである布団を殴った
むしゃくしゃして物に当たった
部屋が汚れるのなんて知らない
物に当たりきっていろんな物が散乱した中で泣いた