第9章 花札とこいこいと
あれからというものの、とりあえず一人きりになり部屋に閉じこもって、政府から私の元へ届いたクビの通知が書かれた紙とにらめっこをしていた。
そして通知とは別に長文の書かれた紙が封筒に入っていることに気がつく。
その内容には、私のいた世界にはこの本丸が機能しなくなる限りもう戻れないこと、会社からクビを通知された後に、私と今まで関わってきた人達全員の中から私の存在と記憶がすべて消されたことと、元から私がいなかったことが書かれていた。
その文を見て寒気がする。両親はもう私のことを知らないというより、私自体生まれていなかったことにさせられ、数少ない仲いい友達の記憶からも私の記憶が抹消されたという事実に頭がついていけなかった。
それと同時に怖くなった。私という存在の在り方、私を知らない人しかいない世界、いろんな考えが頭の中に入ってきて脳がパンクしそう。
「主、入りますよ」
紙を持ちながら項垂れていると襖の外から声がかけられ、どうぞと言う前に誰か入ってきた。
「何をそんなに項垂れているんですか」
「…長谷部さん……」
「仕事をクビになったことくらいでそんなに落ち込まないでください」
「なんで知ってるの」
「燭台切が皆に伝えていました」
「えっ」
許すまじ光忠。絶対バカにしてるでしょ
皆絶対私のことを仕事すらできないから、クビになった主とか思われてる気しかしない。
だって人員削減で切られたからなおさら使えない奴ってレッテルが貼られたようなもんだ……
「光忠ああああああ!!!!」
私は襖を突き破って元凶の元へ走った
「主!待ってください!!!」
後ろから長谷部の声が聞こえたけどそれどころじゃなかった。