第68章 驚きと楽しいこと
「……きて、起きて。次降りるからね」
「んっ……ありがと」
電車が止まり、降りるととても懐かしい風景が広がっていた
「………すこし、実家に見に行ってもいい?」
「もちろん」
駅から少し離れた所にある実家を見にタクシーを使って向かう
家の近くで降りるとほとんど変わりもなかった
しばらくして家から両親が出てきたのが見えた
「お母さん、お父さん」
久しぶりに見た両親の姿に小さく呟く
その呟きを消すように後ろから見知らぬ女の人もでてきた
”………早く行くよ”
”久しぶりに帰ってきたから、今日は飲むぞ”
”そんな、はしゃぎすぎだよ
お母さんもお父さんも”
ドキリとした
女の人の名前は聞き取れなかったけど、女の人はハッキリと私の両親をお父さん、お母さんと呼んだ
私の存在が消し去られているという現実がしっかりと突きつけられて涙が出てくる
「佳奈ちゃん、行こう」
「ごめんね、ごめん、心の整理できてなくて」
「うん。海近いよね、散歩しよう」
光忠はしっかりと離さないとでも言うように、手をきつく握り歩き始めた
しばらく歩いて海についた
太陽がだんだん傾いてきて綺麗な夕焼けになりそうだった
「僕は佳奈がどんな場所で育って生活していたのか知りたかったんだ。前にも君の全てを知りたいって言ったと思うけど、今日それを実行したんだ。この目で見てみたかった。君の世界を」
目の前に海が見えるベンチに座ると光忠はそう言った