第29章 寒いのはしんどいけど嬉しいこともある
「お願いだ、火は……火はっ………」
襖の前へ行くと何やら一期さんの声が聞こえた
「おじゃましまーす」
そういって襖を開けると、咄嗟に腰に水色の物体が抱きついてきた
「うわっ、何!?!?は??え、一期さん????何がどうなってんの??え?」
「あ!主だ!」
「鯰尾くん、これは一体……」
「いち兄に火の粉をお見舞したんだけど、いち兄火が苦手だからこんなことになるとは思わなくて」
「だからってダメでしょ………一期さん、大丈夫ですか?」
「す、すみません。私は火が物凄く嫌いなので、火鉢から遠ざかっていたんですけど、鯰尾が面白がって……」
「なるほど………鯰尾くん、面白いのは分かるけど、お兄さんに向かってそれやるのはまずいと思います…そして一期さんはいつまで抱きついているつもりですか!」
さっきから弟達の見えないところでさわさわと腰を撫で回されていたからそう言った
「主、兄弟は預かるから大丈夫だ。何か用があったんじゃないのか?」
骨喰くんが一期さんを引き剥がしながら言った
「これといって用は無いんだけど、見回りみたいなことをしてるんです。和泉守さんがさっそくやらかしたので、あとはここで火の粉遊びしてる事も知ったので。そして鳴狐はお供の狐はどこへ行ったんですか?」
鳴狐を見るといつもいるお供の狐が見当たらず聞いてみた
「そこ」
指を指したところを見ると火鉢の近くで丸くなって寝ていた
なにあれ可愛い
癒しだ………ってこうしてはいられないじゃん
他の部屋まだまだあるのに
「じゃあ私はそろそろお暇しますね」
「主、ありがとうございました」
一期さんにお礼を言われ部屋を後にした