第5章 シャトーで団欒
「蘭乃一等。」
『はぁい。』
ご飯を食べて一旦は自室に帰っていた瓜江くんが出てきて私の隣に座った。
瓜江くんから近づいてくるなんて緊張してしまう。
「一等はオークションの直前に昇格されたと聞きました。あの実力でどうして二等だったのですか。」
こういう真っ直ぐな男の子は嫌いじゃない。
倉元のようにこなれてる方が嫌だ。
『班長になりたくないのよ。年齢と実力をしっかりつけて確実に、そこそこでいいから上がっていきたいの。上等になるのは10年後でいいや。』
「ユウさん10年後にはCCG辞めてるんじゃないの。」
琲世くんに痛いところを突かれる。
「もったいないです。」
『人間にはピークがあるのよ。特に私は女なんだから、もうすぐ今のようには動けなくなるのよきっと。』
私はずっと誰かの下で、後ろでサポートしていきたい。
前に前に行くタイプではない。
女だからって理由でもなんでもいい、誰かに守られる立場でありたい。
それに自分が上等以上になるなんて思えないし。
「ユウさんはどうして妙に自信がないんだろうね。」
『え、だって周りみんなすごいし私普通の人だもん。』
「見てる"周り"が凄すぎるんじゃないですか?」
確かに六月くんの言う通りかもしれない。
アカデミーからの知り合いで今でも付き合いがあるのって倉元くらいだし。
私って以外と友達が少ないのかな。
『とにかくさら、いつか私が瓜江くんの下につく時が来るかもしれないんだから、平子准特等くらい素敵な捜査官になってよ。』
瓜江くんは黙って頷いた。
早く越えて行くんだ、少年よ。
シャトーは楽しい。
家族みたいだ。