第5章 シャトーで団欒
『倉元と…あの倉元と…こんなことになるなんて。』
「ごめんねほんと、僕らの力不足のために。」
『いや、あの倉元っていうほど男女の緊張感がないわけではないけどね。』
琲世くんが申し訳なさそうな顔をするのは夜のシャトーだ。
洗い物をする琲世くんをカウンターに座って眺めている。
『ううん、いいのよ。ワクワクする余裕くらいあるよ。』
後ろでは不知くんと才子ちゃんがゲームで大騒ぎしている。
「伊藤一等とはどのような関係なんですか?」
『同期よ。アカデミーの頃からの仲。』
お皿洗いを手伝いながら六月くんが尋ねてくる。
「付き合ったりとかは…。」
『ないない。でも男としては見てるかなぁ。』
「なんか良いなぁ。」
記憶のない琲世くんに古くからの関係を羨まれたら、どんな反応をしていいか分からない。
曖昧に笑うと、六月くんがカウンターから身を乗り出してくる。
「倉元さん、ユウさんのこと好きなのかなって一瞬思っちゃう時あります!」
『ええ~?』
茶化すように琲世くんが笑った。
六月くん結構こういう話好きなんだな。
「伊藤一等とぶっちゃけどうなんスか?キスできるかとか…。」
盛り上がっている私たちを見て、不知くんと才子ちゃんも話に入ってきた。
『あー、できるできる。不知くんでも出来るし。』
「っ~~!!」
「ねえさん積極的ですな。」
真っ赤な不知くんが可愛い。
『でも倉元より琲世くんの方が良かった。』
「えっ!」
「ママンご指名よ。」
「どうしてですか?」
六月くんが興味津々。
『なんて言ったらいいか分からないけど、後で変な空気になったとしても私がいつも通りを押し通したら負けてくれそう…みたいな。』
「サッサン舐められてるな。」
「ううっ…。ユウさん喰っちゃうぞ。」
琲世くんの過激な発言に場がワッと盛り上がった。