第3章 お相手は誰?
「俺やりますよ。」
倉元がいつも通りというように明るく言った。
『えっ、倉元…。』
「なに?嫌なの?」
そう聞かれると別に嫌ではないけど、丈さんとのほうが後々引きづらないかなと思ってたのに。
「班長が囮捜査ってのもないだろうし、ハイセに頼っちゃうのも平子班的にどうかなと。」
確かに倉元の言う通りだ。
一応ブジンのほうも見てみたけど、それで納得ですという顔をしていた。
「ブジンにはベッドインは任せられないなぁ。」
「力不足、精進します。」
なにを精進するのやら。
丈さんが見えないため息をついた気がした。
『丈さん?』
「手を動かす。」
『へい。』
平子班内での作戦会議も終わり、囮捜査は来週ということになった。
言われた通り手を動かしながら丈さんをチラ見する。
「囮操作の内容ばかりに目がいっているが、相手はSSレートだぞ。倉元とユウがベッドにいてそこにSSレートが入ってくる。かなり厳しい状況になるはずだ。」
確かに、ベッドの中にクインケを忍び込ませるわけにもいかないし、入ってきてから動いていては確実に間に合わない。
体制を立て直すまでの戦闘開始後数秒間のことを考えたら不安でいっぱいだ。
下口班がSSレート"ラビット"にやられたのも記憶に新しい。
『細かい打ち合わせが必要ですよね。』
私だけを狙いにくるのだから倉元を入り口から死角になるところに隠しておくこともできるかもしれない。
「しかし悟られたくない。囮捜査は何度もできない。特に平子班で片付けようと思えばチャンスは一度だ。」
確実に引っ掛けて確実に殺すためには。
「まあ同棲の期間に色々考えようよ。」
『同棲!』
まさか作戦前からカモフラージュで一緒に住む期間を同棲と名付けられるなんて。
「似たようなもんでしょ。独り身が長いんだから勘弁してよ。」
「……。(作戦前にやらかすなよ倉元)」