第20章 新しいクインケ
帰り道、有馬さんに肩を叩かれる。
「ユウ、タケがいなくなったけど大丈夫?」
『伊東班なら大丈夫です。』
「そうじゃなくて、ユウは大丈夫?」
私?そんなに私って丈さんがいないとやっていけない感じだと思われていたのか?
『いえ、別に…寂しいですけど…?』
もともと、誰がいつ死んだっていいように心構えはしてるんだから。
有馬さんは黙って首を傾げる私を見ていた。
また、何かを確認するような目つきだった。
もう少し突っ込んで観察するに、それは欲しい答えがないことを確かめる目に見えた。
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「おかえり…ってそれ何?誰かのやつ?」
倉元はクインケを二つ持っている私を見て誰かのものを預かっていると思ったらしい。
『これ両方私のなの。銀色のが尾赫Bレート、タカナミ1/3。』
尾赫でBレートという性能に驚く伊東班のみんな。
『黒い方が羽赫Sレート、名前はまだ決まってない。それからこれは"着るクインケ"なの。』
「キルクインケ?何それ、めっちゃ強い?」
大ボケをかましてきた道端とは違って、倉元は口をぽかんと開けて立ち上がった。
「ほんと?」
『うん、ほんとだよ。着るクインケね、着るの、装着するのよ体に。』
「羽赫の着るクインケなんて聞いたこと…。」
『うん、だから試作品らしい。私実験台なの。アキラちゃんも度胸あるよね。』
真戸の娘ならやりかねない。
「うっそー、でもユウは暫く使い物にならないかもしれないな。」
『うん、完全に使いこなすには長くて1年くらいはかかるかも。』
着た瞬間間違って羽ばたいて飛んで行ったなんて醜態を晒しそうで怖い。
タケさんが抜けたとはいえ、上等の班長に一等が三人と戦力的に余裕のある班であることは間違いない。
上も私に羽赫の着るクインケなんて持たせたんだから使い捨てにするはずもなく、もちろん成長を待ってくれるだろう。
この羽赫とどんな動きが出来るのか、楽しみだ。