第19章 指先が届いた
目覚めたら、倉元の腕の中だった。
「おはよ。」
『えっ…。』
倉元に愛しいもののように撫でられて困惑する。
けど気持ちいいしあったかい。
もう一度目を閉じて彼の胸元に擦り寄って気がついた。
こいつ、服着てない。
けど擦り寄ってしまったのはもう仕方なくて、倉元の素肌に顔を擦り付ける。
「寝ぼけてんの?」
それともわざとやってる?
脇の下に手を入れられて体を引き上げられる。
枕に頭を乗せると倉元の顔が目の前に。
「あのさ、もう隠しようがないから言うけど俺、ユウのこと好き。」
こんな至近距離で上半身裸の男に告白されるって状況が恥ずかしすぎる。
「たぶんずっと前から好きだった。俺も気づいたの最近だけど。」
外で鳥が鳴いている。
分厚い黒いカーテンの隙間から朝の光が差し込んでいる。
「朝起きた時にユウがそばにいればいいなって思う。ちょっと先走りすぎてるけど…。」
まだ付き合ってもないのに、結婚を意識した発言をしてしまったことに恥ずかしくなってしまった倉元が顔を覆う。
っていうかすごい恥ずかしい空間だなここ。
ちょっと居たたまれなくなってきて、思わずうつ伏せになる。
「…俺のこと、どう?」
『どうって?』
「平子班期待のホープだけど。」
まあ事実、次の班長候補、上等候補だ。
「俺、そんなに顔悪くないし。」
糸目だけどね、私は好きだけど。
「ユウのことアカデミーから知ってるし。」
あの頃は気楽だったね。
「結構尽くすよ、ユウになら。」
女の子にベタ惚れになってそうな感じするけどね。
「そりゃタケさんや有馬さんには…うん、ボロ負けだけど。」
『私だってアキラちゃんとかハイルちゃんにはボロ負けだけど。』
負けたっていいじゃん、死ななきゃ安い。