第19章 指先が届いた
どこか傍観してるような気持ちになる。
いつだってそうだ。
目の前の敵、怒ってる、私殺されるんじゃない?
上から赫子きてる、私どうするんだろう?
あ、倉元キス待ってるんじゃない?
キスしたらどうなる?
キスしなかったらどうなる?
「別に責任とれなんて言わないからユウのまっすぐな心。そのまま出してよ。」
倉元の唇、厚くも薄くもない。
お風呂に入ったばかりで肌はちょっと血色が良くて、慣れ親しんだ倉元の匂いがして、ここは倉元の部屋で、SSレートを囮捜査の末に殺して。
クインケ折れたなぁ。
怖かったよ。
どうして涙も出なかったんだろう。
倉元と唇が重なった。
重ねたのは私だ。
重ねた瞬間、倉元の目が開いた。
唇は、触れるだけで離れていった。
「好き。」
倉元に優しく抱きしめられた。
もう一度、倉元がキスを求めてくる。
今度は食べるようなキスで、容赦なく舌で口内を荒らしてくる。
そう言えばこいつ、ものを食べる時もけっこう豪快なところがあった。
倉元が強引に私をベッドに寝かせる。
わりと肩が痛いんだけど。
倉元が笑った。
「やられてばっかとか嫌だからね。…他にも傷あるんじゃないの?」
Tシャツを捲り上げられる。
『ちょ、やめっ…。』
脇腹がピリッと傷んだ。
「ここ怪我してる。」
『い、い、痛いっ…!』
今度は優しくなぞられる。
『ぅんっ…、』
「…ごめん。」
倉元が勢いよく服を脱いで、私の横に倒れこんだ。
なんで服脱いだんだろう。
倉元の胸筋に手を伸ばす。
「ダメ、興奮しそうだから。」
また彼は起き上がって薄い毛布を出してきた。
それを被ってまた私に覆いかぶさる。
そしてまた倉元は私の体に唇を這わせた。
優しいけど少しだけ変態っぽいのが倉元らしい。
「今なら喰種の気持ち分かるかも。」
『なんで?』
「噛みつきたい。」
倉元は困ったように笑って私の首筋に歯を立てた。
痛い。
『あっ、あっ…。』
「声えろい、やばい、俺のこと試してる?」
『ちがっ…!』
脇腹を撫でる両手のせいで力が入らない。
急所をいくつも抑えられているのに、彼になら全て晒け出せるかもしれないなんて。
そんなつまらない幻想を信じかけた。
いやだ、怖い、暖かさにのみ込まれそうだ。