第18章 本当の心を見せて
「タケさんが言ってた有馬さんとの話ってなに?」
『有馬さんは…私の訓練の話かな?』
「あのさぁ、こんなこと聞いちゃいけないのかもしんないけど、まさかS3行くとか…。』
『ないよ。…まさか。』
有馬班に行くのは絶対ないし断固拒否したい。
二回級くらい出世したらあるかもしれないけど。
『たぶん、倉元のそばからは離れないよ。』
倉元が頷く。
沈黙が痛い。
「クインケ折れて飛んで行った時、なにを考えた?」
きっとじゅうぞうなら攻撃するものがなくなってつまらないとか思うんだろうけど。
『せっかく丈さんが褒めてくれたのに、ブレスト。でも死ぬかなぁくらいで、丈さんも倉元も、みんなが喰種にクインケ向けてるのを見えてたから、そんなに焦らなかった。』
そっか、と釈然としないらしい倉元が答える。
「有馬さん、いつもどんな感じなの?」
『全部捨てろっていう。』
きっとあの人が全部捨てろって言う言葉を真に受けて、私は必要なものまでも捨てすぎたんだ。
有馬さんは言葉の足りる人ではないのに。
『だから丈さんは前に出ろって言った。』
「俺はタケさんがアレ言った瞬間ビビったけど。」
『ねえ倉元、聞きたのはそんなことなの?』
糸目の癖に表情の分かりやすい倉元の顔を見る。
心を透かし見ようとする。
倉元は盛大にため息をついた。
「あのさ、さすがにユウと俺の仲でも聞けないことが…。」
『大丈夫、SSレート討伐記念になんでも答えてあげる。』
なにそれ、と倉元が笑った。
「…なんであんなことしたの。」
『あんなことって?』
「だからっ、俺のん触ったりとか…!タケさんの声聞きながら出したんだからな…。」
なんでって、触りたかった…いやそれはなんか気持ち悪い答えだな。
『…好奇心?』
「好奇心?好奇心で触ったのかよ。」
『いや、そっちじゃなくて。倉元がどんな顔するんだろうって。』
本当は、とにかく気まずさから逃れようと手を出してしまったのだ。
でも後から考えたら、倉元の反応が見たかったからあんな大胆なことが出来たんだと思ったのだ。
「じゃあさ、俺とキスできる?」
『キスしたじゃん。』
「そうじゃなくて、しなくてもいい状況でも、できる?」
倉元の顔を見つめる。
ごくりと彼の喉がなった。