第16章 前に出る勇気
有馬さんと私の一番の違い。
敵との距離。
有馬さんは一瞬で近づいてきて、認識した時にはもう負けてる。
有馬さんのペースになってるからだ。
有馬さんや強い相手と戦う時は受け身で"攻撃されるから戦ってる"状態なんだ。
そこには命を終わらせる勇気も覚悟も必要ないから。
全て捨てて戦うとは、優しさも置いてこいということ。
殺すためにやってるんだ。
捨てるのは希望じゃない。
殺すために戦ってるんだ。
「ユウ!」
正面からきた赫子を上に斬りはらい、下に潜り込む。
羽赫はスピード。与えられた時から素早さだけは自信を持って生きてきた。
走り抜ける。
『ブジン!』
「蘭乃一等!」
ブジンと二人で足元を狙ったところで倉元が上から叩く。
同時に、丈さんが冷静に一刺ししようとしたところで、喰種が急に方向転換した。
「っ…?!」
突然私に正対する。
まさか対象を絞った?
さすがに後ろに飛び退るもついてくる喰種。
けど、こうなったらもうこいつは勝てない。
確かに甲赫大きいし、赫包だって何個もあるみたいだけど、再生能力も並だし、丈さん、倉元、ブジンに背を向けて勝てると思ったら大間違いだ。
喰種が立て続けに私だけに突撃してくる。
うわぁ、受け止めきれない。
ギリギリで避けれると思った赫子を避けきれず、咄嗟にクインケで受け止めたものの。
重いぃぃぃ…!!!
「ユウ!!!!!」
『う、ぁあ…。』
パリンと音が聞こえた気がする。
クインケが折れた。
終わった。