第16章 前に出る勇気
バリンという凄い音とともにガラスが割れた。
しかし赫子は通ってこない。
特殊な素材のカーテンが邪魔をしているから。
クインケを持って私と倉元は窓と垂直に交わる方の壁に張り付く。
もう一度赫子が伸びたと同時にカーテンが切り裂かれ、それから喰種の声。
背後から丈さんの攻撃にあったらしい。
倉元が勢いよく残りのカーテンを開ける。
「甲赫だ。倉元。」
「あいよ。」
参ったな、甲赫か。
私のクインケは羽赫だから優劣関係的に弱い。
対して丈さんは鱗赫だから優位だ。
倉元がクインケでガラスを叩き割って外に出て、私もそれに続く。
住宅街での攻防戦は想定内だ。
丈さんと倉元が中心に戦うけどさすがSSレート、捉えきれない。
私はほとんど防戦になってしまう。
硬くて衝撃力が強い代わりに速さがないからなんとかなってるだけだ。
「ユウ、間合いが悪い!」
丈さんの声。
嘘でしょこれ以上詰めてもっ…すでに防戦なのに…?
でも丈さんが言ってるんだから間違いないんだろう。
考えることをやめるな。
有馬さん以上に強い相手なんていないはず。
有馬さんとやるときいつもどうしてる?
こうやって避けてっ、受け止めて…流した時にはもう追い詰められてる。
避けて受け止めて流す。
さっきまで、囮捜査は倉元のペースだった。
でも最後は?最後は私のペースだったんじゃない?
事態を傍観する、常になにも期待せず意思もあまりなく。
有馬さんは全て捨てて向かってきてというけれど。
捨てるのは希望じゃない。死ぬために戦ってるんじゃない。