第15章 熱に引きずり込まれる 【R15】
そしてさっきまで倉元が来ていたスーツの上着を顔に押し付けられた。
されるがままに私は大人しくベッドに沈み込んだ。
私に跨っていた倉元の腰が浮く。
「はぁっ…んんっ…っ!」
倉元の低く細い声とスピーカーの盛大な喘ぎ声。
ほとんど悲鳴。
その悲鳴に紛れるように。
「いくぞ。こっちは完璧だ。」
丈さんの冷静な声が耳から聞こえた。
数秒後、上着が払いのけられた。
倉元が肩で息をしている。
ズボンもきっちり履いているからかなり急いだんだろう。
見つめ合うと倉元が小さく首を振った。
ごめん、私も意味わかんなかった。
スピーカーから音が聞こえなくなる。
窓を見る。
あの向こう側に喰種がいる。
床に置いていたクインケを拾って布団の中で握りこむ。
着替えもバッチリだ。
「大丈夫?」
皮肉に聞こえた。
『うん…疲れた…もう寝よう…。』
目を閉じた。
全身で空気を探る。
戦いを始める準備。
全身まで研ぎ澄まして。
最後に有馬さんと手合わせしたあの時のように、全て捨てて。