第2章 驚愕の会議
まず会議室に入ったとき、クインクス班のみんなの様子が変だった。
才子ちゃんがいないのはいつも通りなんだけど。
なにより琲世くんが私を見て口をギュッと閉じて困った顔をしたのだ。
『倉元、私なんかしたかな。』
「え、わっかんね。でも申し訳なさそうな顔じゃなかった?」
確かに、不知くんなんてもっと露骨に不安そうな顔をしている。
六月ちゃんも固い表情だ。
瓜江くんはいつも通り淡々と挨拶をしてくれるから普通だ。
すぐに全員が揃って琲世くんが会議の始まりを告げる。
そんなに固くない和やかな雰囲気が漂うはずだったのに、なぜかぎこちないクインクス班に丈さんも少し違和感を感じているようだ。
「この件はクインクス班が請け負っていたんだけど、とある理由で本日から平子班に引き継いで頂くことになりました。まずは対象の説明からですね。"蛇面"と呼ばれる喰種で一人で活動しているようです。レートはSSレート。彼の特徴ですが…。」
ここで琲世くんが黙った。
丈さんが資料から顔を上げる。
瓜江くんと目が合ったがすぐに逸らされた。
不知くんと琲世くんが目を合わせる。
「…セイコウイチョクゴの女性を好むそうです。」
隣の倉元の喉から「んっ?!」と変な声が漏れた。
『琲世くんもう一回。』
「…性行為直後、の女性、です。」
はてな顔だった丈さんがため息をついた。
え、このことを伝えるためにクインクス班は緊張してたわけ?
ウブすぎない?
『変な嗜好だとは思うけど…戸惑いすぎじゃないですか?』
琲世くんにそう尋ねると余計に引きつったような顔をされる。
「えっと…その、なかなか性行為をしている男女なんて探せなくて、対象は最近CCGに追われていることを察知したのか…えっといわゆるラブホテルに現れなくなったので…。」
『で?』
琲世くんの目を刺すようにジッと見つめる。
「あの、えっと…囮捜査を…ダメですよね。」
一瞬静まり返る会議室。
なるほど、平子班に引き継ぐ理由が分かったぞ。
『才子ちゃんは。』
「えっ…。」
琲世くんは優しいから、才子ちゃんより私の方が今回の囮捜査に適していると上から言われたとは言い出せないんだ。
「ちょ、」
「で、」
『いやいやいや。』
倉元と丈さんと言葉を遮る。