第13章 琲世先生の触れ合い講座
朝起きて倉元が私に巻きついて寝ていたのは正直ただただ邪魔だった。
目覚ましが鳴ってもなかなか起きないし、仕方なく私は倉元を巻きつけたまま起き上がった。
これが可愛い女の子なら起こすのだろうけど、残念ながら手を使わずとも倉元が巻きついていようと腹筋だけで起きられる。
私に引きづられて起きた倉元はポカンとしながらベッドに横たわっていて、それはそれは滑稽な顔だった。
髪の毛ボッサボサだし。
『ブジン。』
「はい。」
『喰種見つかるかなぁ。』
「全力、尽くします!」
うん、知ってるよ。
今日は薄い水色のシャツに、白地に青い花柄のスカートでCCGに出社。辛い。
「昨日の伊東一等の振る舞い、素晴らしかったです。参考になります。」
『倉元に言ってあげてよ。それからブジンがあれを参考にする日は来るのかな。というかなんの参考にするのさ。』
小声でツッコミを入れると隣の根津が笑った。
『根津昨日どこにいたの?』
「最後家が並んでる一本道歩くじゃないですか、その道の突き当たりのアパートの屋上ですよ。ユウさんたちの周りが一番よく見えるからもし不審な奴がいたらすぐに分かりますから。」
住宅街に入ってからは広くて長い一本道だ。
正面から見てたのは根津だったのか。
よく見える代わりに何かあった時は駆けつけるのが一番遅くなってしまうけど。
『今日も役割は変わらず?』
「はい、問題なかったので全員昨日と同じ配置の予定です。」
あとはもう運の問題だ。
昨日は殆ど予行練習で動きの確認をしたかっただけで、今日からが本当の本番と言ってもいいかもしれない。
2時間ズラしての捜査となる。
丈さんはずっとクインクス班からもらった写真と資料を真剣に見ている。
「ふん…。」
『丈さん?』
「対象の特徴は叩き込んだ。現れたら絶対に気づいてみせる。それから、今日は駅前でしばらく恋人のふりをしてみてくれないか?」
丈さんには珍しく意気込んだ様子に少し圧倒される。
『えっと、恋人のふり…いちゃいちゃしておけばいいんですね。』
「あぁ。でもユウは真顔なの気をつけて。」
はぃ…小さく返事をする。