第9章 最期の時は
今日はデスクワークはしない。
普通の時間に家に帰るから持ち帰りにしようということになったのだ。
修理し終わってからまだ一度も触ってなかったクインケを持って鍛錬場に行く。
どうせ午後から見回りなんだしもう今日は座ってやらないんだ。
一人っきりの空間でブレスト(羽赫-RATE A)を展開する。
まずはゆっくり、確認するように、動き始める。
ゆっくりだからって無駄な時間は使わない。
常に想像する、常に目の前の敵と戦う。
考えることをやめない。
平子班の戦力はおかしい。
一等捜査官が三人と二等捜査官が三人。
丈さんも准特等だけど実質もう一つ上でもおかしくない実力だし、間違いなくこの間のオークション戦で倉元と武臣も昇進する。
倉元が上等捜査官になれば彼が抜けて別に伊東班ができるか、丈さんが引き抜かれて倉元が繰り上がるか。
倉元は丈さんがいなくなると思っているみたいだけど。
どっちにしろ倉元は班長になるだろうと見ている。
その時は彼と同じ班で彼の下につけたらいいなと思う。
そのためにも一等捜査官としてもっと実力を上げておきたい。
だってやっぱり私……
ふと湧き上がった感情に思わず動きが止まる。
死ぬなら倉元のそばがいい
だなんて。
「ユウ?」
背後からかけられた声に飛び上がる。
『有馬さん!』
「どうしたの?どこか痛いの?」
急に止まったからビックリしたと有馬さんが心配してくれる。
『有馬さん、私倉元と離れたくない、伊東一等と離れたくないです。』
有馬さんが私をジッと見る。
「手合わせ、しよっか。だから今はいらないものは全部捨ててね。」
そしたら君を引き上げてあげるよ。