第8章 偽装結婚
月曜日。
朝から反響が凄くて、丈さんの顔を見たらどっと疲れがきた。
『なんなんですか丈さん、言いたいことは言ってくださいよ。』
「おはようございます蘭乃一等!!お綺麗です。」
『ありがとうブジン。それからおはよう!!』
白いシャツに膝丈のスカートはパステルカラーの黄色。
しっかりした化粧に揺れるピアスに、これは極め付けと言ってもいいが…バックは赤だ。
あぁ、それから指輪。
やりすぎた。
「見慣れないから戸惑うな。普通のOLのようだ。そういうのも似合うな。」
朝から受付の女の子を始め、出会う人出会う人に凝視される。
蘭乃一等やめちゃうの?
そんな声も聞こえてきた。
私は思わず笑ったのだけど、隣を歩いていた倉元が深刻そうな顔をしているから驚いた。
どうやらこれで元々捜査官として長くやるつもりじゃなかった私が退職を意識するかもしれないと考えたらしい。
『私まだ辞めませんから。』
「知っているが。」
ほら、丈さんは当たり前だろうと素っ気なく返事をした。
こういうところが倉元はまだまだなんだ。
「悪い悪い。ちょっとビビっただけだって!」
『あれは倉元が黒のスーツで隣歩くからでしょ。結婚して辞めるの?って流れだよ。』
「あー、俺らって結婚しそうなのかな?」
今の一言はバカだ。
平子班のみんなが痛い目で倉元を見る。
「…二人ともずっとその格好か?」
丈さんに促されていつものような格好へと着替えに行くことにした。
倉元はずっと私がいつ辞めるのかを恐れているのだろうか。