第2章 平和の都へ
――鈴の音が鳴り響き、沙霧は目を覆うほどの光につつまれた。
光とともにあたりの空気が渦巻いて、沙霧を押し流した。
「………っ!」
〈――沙霧。沙霧っ〉
遠かった不思議な声が、だんだん近づいてきた。
不思議な声の元である、白麒麟の姿になった風早が沙霧に近寄る。
〈沙霧、聞こえてますか?〉
「………ぅ………ん………」
やっと体が留まり、ふわふわした感覚に、恐る恐る薄目を開いた。
「眩しい‥‥」
白く光り輝く雲の中だ。
不思議と不安は感じない。
〈良かった。痛みとかはありませんか?〉
「あ‥‥はい。大丈夫、です……え!?白い獣が喋ってる!?」
完全に覚醒した沙霧は、先ほど見た白い獣が喋っているのに目を見開き驚いた。
白麒麟は、沙霧の様子に軽く首を傾げる。
指をさして「‥‥ぁ……さっきの……人?……麒麟?」と、ふるえている沙霧に合点がいき白麒麟はふっと笑うと、沙霧をじっと見つめる。
〈はい。俺は、さっき会った風早です。
本来は白麒麟である、この姿をしています。あ、ちなみに風早というのは偽名なんですがね〉
くすりと笑う白麒麟に、沙霧は頭がついていけず唖然とする。
〈ふふ。なぜ偽名なのかは、時が来たらお話しましょう。
…それより、ここがどこだかわかりますか?〉
ハッとした沙霧は、きょろきょろ見回して、白麒麟を見る。
「…そうだ。えっと、えっと…ここ、どこなんですか?」
〈――ここは何もない場所。世界の隔たりの境、時空(とき)の狭間〉
「時空(とき)の…狭間…?よく小説やゲームに出てくるような所かな?
現代や異世界とかの、違う時空との間の場所…?」
〈えぇ…、そうです〉
「でも、なんでこんな所に?」
白麒麟は穏やかに話す。
〈あなたは選ばれたのです〉
『選ばれた?』
沙霧は意味がわからず首を傾げる。
〈はい。天鹿児弓(あめのかごゆみ)が、俺をあなたのもとへと導き、あなたを見つけた。そして、あなたを選んだ……―――“白麒麟の姫”を‥‥〉