第2章 平和の都へ
弓の青い花の飾りが輝き、澄んだ音が鳴る。
少女の耳の奥で響いた。
「また、この音?」
「(…まさか…)きみ、名前は?」
今度は優しく笑いかけ、右手をさしだし少女の右手を掴み立ち上がらせる。
「……あ…私は、沙霧‥‥ 雨宮 沙霧。12歳……」
ふらつきながら答える。
風早はにっこり笑った。
「俺は、風早、といいます。よろしくお願いします。沙霧」
「……は、はい?(いきなり、呼び捨て…?)」
風早は改めて少女を見る。
ボブヘアのブラウンの髪に、澄んだ翡翠の瞳。
制服を着ているし、年齢からいって中学生だろう。
…この少女は、龍神の神子ではない。
白龍は、龍神の神子は数年後に現れると言っていた。
だから、天鹿児弓が反応しても、たぶん違う。
(―――龍神の神子とはまた、違う存在‥‥か)
「あぁ…すみません。いきなり呼び捨てをしてしまって」
「い、いえ。あの、この弓はなんですか?どこから現れたんですか?あなたはなんなんですかっ?」
矢継ぎ早に紡がれていく。
沙霧の勢いに風早は苦笑いを浮かべ、説明しようと口を開きかける。
「さっきの白い獣は、あなたなんでしょう!?」
「……見ていたんですか……」
風早が小さく、悲しげに呟いた。
(…あ…また、悲しそう)
〈―――白麒麟の姫。導きの娘が…選ばれた…〉
――白龍の声が突然聞こえたかと思うと、あたりはまばゆい光りに包まれる。
「えっ!?」
「沙霧っ!」
光りが消えると、沙霧と風早の姿はなかった。
もちろん天鹿児弓も。
澄んだ音が響いた‥‥
(‥なんなの‥?)
(この弓も…あの人も)
(あの声も……)