第2章 平和の都へ
「“白麒麟の姫”?…姫って……私っ!?」
〈えぇ……沙霧。あなたです〉
嬉しそうに白麒麟が、澄んだ金色の瞳を細めた。
〈さぁ、そろそろ行きましょう〉
「行くって、どこへ?」
〈あなたが行くべき場所。大丈夫。目を覚まして下さい。
また、すぐに会えます〉
「ちょ……わっ!?」
再び光の渦へと飲み込まれる。
沙霧はまた意識を手放した。
(……私、どこに行くの……)
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―――はらり、ひらり
鮮やかな桜色の花びらが、風に揺れ、春を知らせる。
空には金色に輝く、十六夜。
かたり…、と奥の部屋の中で音がした。
暗がりだが灯りのついた部屋にいた、何枚もの色の服…十二単を着た、藤色の長い髪の少女がピクリと反応する。
「音…?あの部屋には、誰も居ないはずでは…」
幼い声からして、まだ十(とお)にもみたない子供だ。
幼い少女は不安を感じながら、近くに誰か居ないか捜す。
いつもそばで警護している一人の青年を呼ぶ。
「頼久、頼久は居ますか?」
「…いかがされました?」
その青年は腰に刀をさしている。
青い髪を上で無造作に一つに結んでいて、整った顔立ちの青年。
外で警護していた青年は、自分を呼ぶ声に素早く反応して御簾に近寄る。
「今、誰も居ないはずの奥の部屋から、物音がしたように感じました。すぐに見てきてもらえますか?」
「承知いたしました」
青い髪の青年は礼をすると、幼い少女が言う部屋へと向かった。