第2章 平和の都へ
「……ふぅ。久しぶりにこの姿になると、変な感じがしますね」
穏やかな少年は苦笑を浮かべ、前髪をかきあげる。
――パキッ
「!誰だっ!!」
「っ!?」
誰かが枝を踏んだ音に、風早は勢いよく振り返る。
その誰かは大声で威嚇され、ビクッと肩を大きく揺らし息を呑む。
振り返った先に立っていたのは、中学生ぐらいの少女。
「…女の子……?」
「…っ(…こ……怖いっ…!)」
拍子抜けという風に風早は肩の力を抜く。
少女は紺のリュックの紐を両手で握り、強く目を閉じた。
カタカタと小さく震え、涙をうっすら浮かべている。
「………ぁ……まいったなぁ……」
とうとうへたりこんでしまった。
先ほども言っていたが、久しぶりに人の姿に戻った風早は、今までの感覚などが鈍ってるようで。
必要以上に強く殺気が出てしまった。
だから、この少女が怯えるのもわかる。
「…えっと……すみません。なんか怯えさせてしまって」
スッと右手をさしだしながら、軽くかがむ。
しかし、少女は両手で目をこすって顔をふった。
(……困った)
また前髪をかきあげ、少女を見る。
その泣いてる姿が、幼い頃の千尋とかぶった。
(………似ているけど、千尋じゃない。とにかく、この子を泣きやませないと……)
「‥‥あの」
――……リリィ…ン
「………不思議な……音………」
「えっ」
少女が閉じた瞳を開けると、光りが沙霧を包み手には装飾の美しい弓が握られていた。
矢も、手の中に現れる。
少女と風早はそれぞれ違う反応をした。
少女はいきなり現れた弓に驚き、風早はこの少女の手に現れた弓に信じられない目を向けた。
「え?弓が……どこから?」
「どうして…この弓が……?」