第2章 平和の都へ
「―――あれ…?」
学校からの帰り道、よく通る噴水広場を歩いていると、綺麗な桜が舞い落ちる中に、白い獣がいた。
美しい鬣に、角。
綺麗な金色の瞳をした獣だ。
しかし、見た目とは裏腹に、その瞳は悲しそうだった。
「……?」
沙霧はジッと白い獣を見ていると、その白い獣は沙霧に気づくことなく、後ろを向き駆けて行った。
(なんだったんだろう‥‥?白い獣?)
なぜか胸の中がざわめき、沙霧の足は知らず知らず白い獣を追いかけていた。
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その白い獣…白麒麟は、噴水広場から少し離れた森の中にいた。
表情はあまりよくなく、桜を眺めている。
(…‥白龍に言われ、護るものを探しても見つからない……。……………そういえば………)
白麒麟は白龍と別れる前にもらった、天鹿児弓をふと思い出した。
この天鹿児弓は、代々龍神の神子に継がれる弓だ。
白麒麟が風早としていた時空では、最初は一ノ姫が持っていたが、それは二ノ姫である千尋に渡った。
最後に千尋達と別れるまで、千尋は天鹿児弓を手にしていた。
それをなぜ白龍が持っていたのか問う前に、すでに白龍の声は聞こえず。
ただ一言…。
〈……この天鹿児弓が導いてくれる……〉
〈……白龍……あなたは、何が言いたいんですか‥‥〉
見つからなくてもどかしい。
そんな想いがこみ上げてきて、白麒麟はゆっくり深呼吸をする。
体がまばゆく光ると、現れた姿は人だった。
以前、風早と名乗っていた姿……。
あの時より若く見えるのは、黒龍の陰の気を癒やす為に、時空の狭間にいたからのようだ。
10代…ぐらいだろうか。