第2章 平和の都へ
「……は、はい!!」
「よろしかったら、お名前をお聞かせ頂けないでしょうか?私は、左大臣が姫…藤と申します」
そう言って、丁寧に頭を下げる御簾越しの藤姫に、「藤姫…姫が御自分で自己紹介など…」と嘆息する頼久に、若干苦笑いが浮かぶ風早。
藤姫は、「…ぁ…申し訳ありません、頼久」と頬を少し染める。
沙霧も慌てて床に手をつき頭を下げる。
「あ! 雨宮 沙霧といいます。よろしくお願いします」
「俺は…風早といいます」
風早も頭を下げ名を告げる。
一瞬見せた探るような瞳に、藤姫は気づかず笑った。
「では、詳しいお話をお願いできますか?何故、お二人はあの部屋に?それに……」
藤姫はちらっと沙霧と風早の服装を見つめる。
「お二人のその服装は、この京などで見たこともありません。異国…とも、少し違うようですし……」
問うて来るその姫に、沙霧は風早を振り返って。
「か…風早…」
「大丈夫ですよ。沙霧」
後ろにいた頼久は、先ほど見た一瞬の探るような瞳をした風早に興味を抱いた。
(何を隠そうと、藤姫の敵ならば………斬るっ)
(…さて、話すにしても隠そうとするならば、後ろの彼が斬りかかってこないとも限らないし…。俺が八葉だったことはふせて、)
そこまで考えていた時だった。
遠くからいくつかの足音が近づいてくる。
「「?」」
「?」
「騒がしいですね?」
頼久と風早がいち早く反応し、沙霧は首を傾げ、藤姫は頼久を見る。