第2章 平和の都へ
「命は大事なものなんだよ?そんな、簡単に命をかけるだなんて言わないで!!」
「……わかりました。しかし、あなたが危険だと判断した場合は、先ほどのようにあなたをお護りいたします。
命を大事に、ね」
沙霧の髪を上から下へと、優しく撫でる。
風早の表情はどこか悲しんでいた。
「本当に?」
「えぇ」
「へへ…」
ほんのり朱く染まった頬を隠すように、沙霧は風早の左腕を放し、二人を小走りで追い抜いて歩いた。
「……不思議な少女だな」
「でしょう?」
風早が頼久の横に並ぶと、頬をかすかに緩めた頼久がいた。
風早は嬉しいのか、悲しいのかわからない表情で、先を歩く沙霧の後ろ姿を見つめていたのだった。
満月が三人を照らす中、二人も歩みを進めた。
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パチパチと松明が真っ暗な闇を照らす。
この真っ暗な闇は終わることのないように思えるようで。
ピチャーン…と天井のような岩から、水滴が落ち下に小さな水溜まりを作る。
ここは長い長い洞窟。
その奥で変わった仮面をつけた、一人の男性が大きな岩に寄りかかり、自然によって創り出された丸く窪んだ岩の中にある水を眺めていた。
映し出された水の鏡には、太刀を持つ青年と対峙している、不思議な格好の少女と同じように太刀を持つ青年が出てる。
最初に頼久が部屋に入って来た時のようだ。
「……来たか。龍神の神子とは、また違う存在の異世界の少女…」
次に沙霧だけが映され、男は水の鏡に手を置く。
瞳だけ仮面をしているので表情はよくわからないが、口元はうっすら弧を描いていた。
「ふふ……。早く力をつけよ…。龍神の神子とともに、我のものにーーー」
(早く…早く…楽しみにしているぞ…)
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ちょっと気になった事に風早は沙霧を呼び止めて首を傾げる。
「…………ところで、沙霧?」
「なに?」
「彼が逢わせたい方の部屋は、わかるのですか?」
ピタリ、と足を止め振り返る。
「…………どこですか?」
「………ふっ。こちらだ」
「(笑われた…っ!?)」