第2章 平和の都へ
「うわぁ…。綺麗な満月~」
ちょうど少ししかなかった雲が晴れ、金色に輝く満月が出てきた所だった。
沙霧の声に習うように、風早と頼久も歩きながら夜空を見上げる。
「本当に綺麗な満月だ。どこの世界もこれは変わらないんですね」
「どこの世界も?」
ぴくりと頼久は反応する。
沙霧は肩を跳ねらした。
「か、風早」
「詳しくはきみの主に話すから、急ごうか」
余裕しゃくしゃくな風早の態度を咎めることはなく、止まっていた足を頼久と沙霧、風早は再び動かした。
一瞬、頼久は眉間に皺を寄せたが。
「ーーもう、吃驚したよ。ここがどこだかわからないけど、あの人の格好からして武士……だよね?」
「えぇ。どうやらここは、昔の時代のようですね。
しかし、俺や沙霧が知っている昔の時代とも、違うかもしれませんが」
風早の言葉に疑問をぶつける。
「違うって…どういうこと?」
「それは、これから彼に案内される主に聞くしかありませんね」
「主か…。怖い人かな?」
「大丈夫です。何があっても、沙霧は命をかけて護りますから」
ぶるり…と怖さからの震えをおさえるように沙霧は自身を抱き締める。
風早はニコッと笑った。
しかし“命をかけて”という単語に、聞き慣れない沙霧はぎょっと仰ぎ見る。
「命をかけてって、どういうことっ!?」
「沙霧…」
「……」
「なんで命をかけるのっ!?」
「落ち着いてください。沙霧」
風早の呼びかけに沙霧は気づかない。
頼久は静かに二人を見やる。
なお沙霧は大声で言い、風早の左腕を掴んだ。