第2章 平和の都へ
「私も見たことはないが、陰陽師が使う術とは違うと聞いた」
「そうか…」
顎に手をそえる風早と、「鬼かぁ…角、あるのかな?」と腕を組んでブツブツ言う沙霧。
暗さでよくわからないが、近くでじっくり見たことで鬼の容姿とは異なることはわかった。
(……考えても仕方ないか。危険だが、藤姫に逢わせたほうが早いようだ)
主の一人である幼い姫を思いながら、頼久は藤姫の名を出さぬように話す。
「二人に逢わせたい方がいます」
「逢わせたい方?」
沙霧は風早を振り返って、どうしようと言うように翡翠の瞳を向ける。
それに安心させるように微笑んで頷き、風早は頼久と沙霧の間に立つ。
「その方は、きみの主かい?」
「主の一人である方だ。主からその方を護るよう命じられている」
「ほう…。なるほど。その方に逢わせてくれ」
「…ついて来い」
くるりと踵を返し歩き出した頼久。
沙霧は風早を見上げていると、風早は沙霧の背を軽く押し「さっ、行きましょう」と促して部屋から出る。
沙霧は部屋に一人だけだと気付くと、慌てて二人を追い掛けた。
頼久から少し離れた所を歩きつつ、沙霧はさり気に外側を歩く風早の隣りから庭を見る。