第2章 平和の都へ
「まったく…あなたは。こんな状況で飛び込んでくるなんて、いったい何を考えてるんですか…」
「…あ…だ、だって!危なかったじゃない…!」
「危なかったのは、あなたです」
「う゛……」
ピシャリと指摘され、沙霧はびくりと肩をはねらし目を泳がす。
やれやれと頭に手をやり振る風早だが、少し沙霧という少女の性格がわかった気がして嬉しかった。
頼久は刀を交えたまま、沙霧と風早のやりとりに冷や汗を流しながら考えていた。
(…先ほどの殺気…本物だった)
柳眉を寄せて唇を噛み締める。
沙霧という少女を助ける為に、自分の太刀を受け止めたこの青年。
初めて逢って感じた殺気は、とても怖ろしいと思った。
まだかすかに滲み出ている殺気は、少女ではなく自分に向けられたまま。
風早の刀を握る手に沙霧は、ゆっくり右手…左手と添える。
「とりあえず、刀をおろして。ね?」
「しかし…」
「お願い。ちゃんと話せば、この人もわかると思うの!」
風早の殺気を静めるように優しく微笑めば、「………わかりました」と風早は刀をおさめた。
沙霧はホッとしながら、刀を床につきさし片膝をついた頼久に近寄る。
「はぁ…、はぁ…、」と、らしくなく床を見つめて息を整える頼久。
「あの……」
「………なんですか?」
沙霧は怯えたように口火を開いた。
風早は止めようとはせず見守る。
「大丈夫ですか?」
「……たいしたことはありません」
「でもっ」
なお、近寄ろうとする沙霧を頼久は左手で制止、刀を手にしている右手に力を入れ立ち上がる。
ふぅ…と、風早から感じた殺気を消し去るように息を吐き出す頼久は、刀をおさめ侵入者に二人に向き合う。
その顔はもう武士団の若棟梁だ。