第2章 平和の都へ
(いったい何の音なのでしょうか?…母上……)
ギュッと小さい手を祈るように握り締める。
大人びたような口調だが、やはりまだ幼い少女。
怖いのだろう。
近くにはお付きの女房はおらず、夜も遅いことから下がったようだ。
幼い少女は早く青い髪の青年が、「何もございませんでした」と言って戻って来るのを祈っていた。
+++
「――沙霧、気がつきましたか?」
「………ん………あなた…風早、さん?」
沙霧は目をこすりながら上半身をおこすと、人の姿になった風早が片膝をついて、心配そうに顔を覗き込んでいた。
「はい。どこか痛むところなどは、ありますか?」
「……あ、いえ。大丈夫です。風早さん…」
どこも痛いところはないと首を横に振る。
風早は「良かった」と呟いた。
「沙霧」
「はい」
「さん付けはいりませんよ。すみません、さん付けは慣れてないので、できれば呼び捨てに。
敬語もいりません。あなたは、俺の主なのですから」
軽く微笑んで言う風早に、沙霧は固まった。
「………………………………あ…………主………?」
「はい」
笑顔だ。
スッゴい笑顔だ。
(なっ!?え?主?誰が!?……私!!?)
沙霧は驚いて立ち上がりあたふたしだす。
「え?どうして私が?!」
「落ち着いて下さい」
「だって、いきなり主だなんて……」
「シッ…」
「?」
右の人差し指を口の前にやる風早に、沙霧は反射的に両手で口をおさえる。