第4章 「お疲れ」
「観客が多いのは嬉しいことよ?もっと喜ばないと」
でも·····、と言おうとした時、後ろからよく見知った声が聞こえてきた。
「そうだぞー。それに、ライブは自分が楽しむことで観客も楽しんでくれるんだからさ」
『下野さん!?』
「よっ」
そういえば来るって言ってた·····。
「時間もおしてるんでしょ?早く着替えて。俺も観客も律華ちゃんの登場を心待ちにしてるんだから」
そう言うなり下野さんがわたしの背後にまわり、背中を軽く押した。
後ろを振り向くと、下野さんが優しく微笑んでいた。
「ほら、早く」
わたしは大きく頷いて控え室へと走っていった。