第4章 「お疲れ」
コンコン
「そろそろお時間です」
スタッフが呼びに来てくれた。
今まで頑張ってきた成果を発揮するんだ。
今まで全力で練習したんだからできないはずがない。
心臓あたりに手を置くと、心臓が早鐘をうっているのが分かった。
舞台までまっすぐ歩く。
とうとう舞台についてしまった。
中央のへこんだ所で静かに時間を待つ。
観客席が賑わっている声が聞こえる。
聞けば聞くほど緊張でどうにかなりそうだった。
「落ち着いて」
そう近くで聞こえたのと同時に肩に手が置かれる。
あまりにも驚いて心臓が大きく鳴った。
「大丈夫だよ。俺が保証する。思いっきり楽しんで」
下野さんだ。
下野さんはいつでもわたしがほしい言葉をくれる。
思わず笑みがこぼれた。
『はい。見ていてくださいね』
「うん」
返事が聞こえてすぐに肩にあった温もりが遠のいていく。
ステージの周りを煙が囲んだ。
わたしの初めてのライブ開演だ。