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君だけに届ける【VOICE】

第3章 初ステージ!?初ライブ!?


「ライブまであと一ヶ月か」

唐揚げを食べ終わり、くつろいでいたときに下野さんが静かにそう呟いた。

『そうですね』

うまくいくでしょうか?

とうっかり口に出しそうになる。


わたしが不安に思っていることを下野さんに知られたくなかった。
色々とお世話になっている先輩にこれ以上余計な心配はかけさせられない。
いや、かけたくない。

自分が情けなくなるから。


下野さんと目が合う。


すると、わたしの頬に下野さんの手が置かれる。

状況が読めなくて下野さんから視線を外そうとも、どこに向けたらいいのか分からなくて、結局彼と目があったまま。

『あ、あああ、あのっ』

声が上ずる。

焦って、どうしたらいいのか分からないわたしとは違って、下野さんには余裕があるように感じた。
いつもの可愛い下野さんじゃない。


『急にどうしたんで――····!いひゃいっ!』

わたしの頬にそえた手で、下野さんがそれをつねる。

「あはははははっ」

『ひょっと!ひゃにふるんでふかっ!?』

「あはははははっ、なに言ってるのか全然分からないし····!」

ひとしきり笑ってからやっとわたしの頬から手を離す。

『もうっ!痛いじゃないですかっ!』

「あはは、ごめんって」

でも、と言葉を続ける。

「やっといい顔になった」

『え?』

「だって、ずっと不安そうな顔してたから」

『バレてたんですか····』

まあね、と楽しそうに、にかっと笑う。
この先輩には敵わない。
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