第2章 はじまり
『大分時間がかかっちゃった…大丈夫よね、お父さんお母さん!』
さっきの遅れを取り戻すがごとくに全速力で走る
『っ!…見えてきた!!』
やっと父と母に会える
そう思っていた華の前に広がる光景
は無惨なものだった
完全に崩壊した家の前に血まみれで横たわる父と母
『そ…んな………』
横たわる父と母に触れるとその身体は
すでにかなりの時間が経っていたようで
冷たくなっていた
『ねぇ…お父さん!お母さん!目を開けて!!
嫌、嫌だよ……もうすぐお兄ちゃんも帰ってくるのに…
3人でおかえりって言おうねってっ…約束したのにっっ』
何度声をかけても2人の身体が再び動くことはない
『い…や……いやああああああああああ』
華は父と母にしがみつきながら
声を抑えることなく泣いた
どれくらいそうしていただろうか
もうそろそろ死神がやってくるだろう
父と母を殺した虚はどこへ行ったのだろうか
そんなことを考えながら
華はとにかくここから離れたくて
とぼとぼとおぼつかない足を叱咤しながら
どこへともなく歩いていた
涙は枯れていた
どうして死ななければいけなかったのか
どうして父と母だったのか
どうしてどうしてと答えのない
疑問ばかりが頭の中を支配する
その時だった
「…お、お姉ちゃんっ」
『…?!』
そこにはさっき助けた少女がいた
泣きすぎてぼーっとした頭を
フル回転しながら
状況を理解しようとする
『……っ!なんでここに?!』
ビクッ「ご…ごめんなさいっ……
付いていくつもりじゃなかったの…
ただ……1人じゃ怖くて」
『………』
「わ、私ねっ
お姉ちゃんと一緒に行きたい!」
『っ!…なんで?』
「お母さんがね、言ってたの…
2人いれば嬉しい事は2倍になるし、
悲しい事は半分になるのよって…
それにね、私まだまだ子供だけど
おっきくなって、修行して、たくさんの人
を守れるようになりたいっ
お姉ちゃん、強いんでしょ?
私もお姉ちゃんと行けば強くなれるかもってっ…」
涙目で必死に訴える
少女の言葉を聞いて
私は母の言葉を思い出していた