第8章 真央霊術院
『…何か?』
私たちの前に立ちはだかった男2人組は、私に目を向けると、つま先から頭の先まで値踏みするように視線を走らせたあと喋り出した。
「俺達が用があるのはお前じゃなくて後ろの彼女だよ」
「世間知らずそうなお嬢様にひとつ忠告をと思ってね」
「忠告、ですか……?」
城之内さんは不安そうな顔をして2人の男に問いかけた。
「そ、貴族である城之内家のお嬢様ともあろう君が、流魂街の出の何処の馬の骨とも知れない奴とは付き合わない方がいいですよ、ってね」
「そうそう、流魂街から来た連中なんて大した力もないくせに、大方、死神になって貴族に取り入ろうとでも目論んでるに違いないんですから」
何を言い出すかと思えば……
入学式の時から薄々感じてはいたこの嫌な感じ。
霊術院に来るのは大体が貴族かそれに相当する上流階級の子息女ばかり。大した力もない流魂街の貧民と同じ机を並べるのが嫌なのだろう。
「この霊術院の品位が落ちますね、まったく」
「ささ、城之内さん、我々と一緒に行きましょう」
「え、えっと……」
いきなりそんなことを言われて彼女も困惑している。
まったく……
ここで懲らしめてもいいけれど、あまり目立つのは宜しくない。
どうしたものか。
「おい…ちょっとは何か言ったらどうなん…ギャアアアアアアア!!!!!」
威勢よく私に絡もうとしていた男の方が、いきなり叫び声をあげだした。
「なっ。何が起こっ…イギャアアアアア!!!!!!」
片割れの異常事態に同様していた男の方も、叫び声あげると、2人してバタンと倒れてしまった。
何が起こったのかわからず、ぽけーっとしていると、
「行くぞっ!」
という声に手を引っ張られ、教室を後にした。