第8章 真央霊術院
「ようこそ、新入生諸君。我が真央霊術院は未来の隠密機動・護廷十三隊を養成する伝統ある学院である。諸君等はその伝統に恥じぬよう、日々精進して欲しい」
迎院の儀は粛々と執り行われた。
今はそれぞれのクラス別に教室で諸々(もろもろ)の注意事項や明日以降の連絡などを聞いていた。
「特進クラスだけが優秀という訳ではない!君たちも彼等に負けぬようそれぞれが日々精進すれば、勝るとも劣らない……」
私は長々とした担任の話を半分聞き流しながら、違うクラスにいる妹がクラスに馴染めるかなどと考えていた。
「それでは、今日はこれで解散!」
担任が教室から出ていった途端、辺りが喧騒に包まれる。
新入生らしく友人作りに励む者、仲間内で井戸端会議を始める者など様々だったが、新しい環境に皆どこか浮き足立っていた。
私はというと、そもそもここで学ぶのは一種の通過儀礼的な感覚で、平穏無事な学院生活が出来ればいいので端から誰かと関係を持つ気はない。
早々に帰り支度を済ませ、蘭と合流するために教室を出ようとした時だった。
ふと、視線の端に1人の男の子の姿が映った。
周りの人間などいないかのように、ただ黙々と1人何かをする少年から何故か目が離せなかった。
暫く彼を見つめていたが、そう言えば蘭と落ち合う約束をしていた事を思い出して漸く教室から出た。
「あっ、姉さん!」
教室を出ると、待ってましたとばかりに蘭が寄ってきて2人で寮までの道を歩き出した。
「蘭!ごめんね、待たせちゃった?」
「ううん、今来たとこ!」
「よかった。それより、寮は結局別々の部屋になっちゃったけど私がいなくてほんっっとうに大丈夫??」
「もう〜……心配性なんだから!大丈夫だよ!これでも料理くらい出来るんだから!!」
自信満々にそういう蘭だけど、この子は自分の料理の腕が壊滅的なのに気づいていないらしい。
私はまた変わらず2人分の料理を作ることになりそうだと心の中で独りごちた。