第7章 更木の剣八
「………うっ…」
傷が治ったことで意識が戻った一角が呻きながら目を開けた。
「一角!大丈夫かい?!」
「弓親か……俺…怪我してたはずなのになんでこんなに体が軽いんだ?」
「あぁ、それはこの人が治してくれたのさ」
弓親が私たちの方を向くと、それを追うように一角もこちらを見た。
「あんたは…」
『あー、えっと…さっきはどうも』
「あんたが治してくれたのか?」
『ええまぁ…それより身体、痛むところとかありませんか?』
「それは大丈夫だが…その……悪かったなさっきは」
一角は起き上がると、私に気まずそうな視線を投げた。
『さっきも弓親に言いましたけど、ぜんぜん気にしてないですから!』
「そうか…ありがとな。弓親から聞いてるとは思うが、俺は斑目一角だ。堅苦しいのは苦手だからな、一角でいいし敬語もいらねぇ!」
『わかったわ、一角!私は水無瀬華!この子は妹で』
「五十嵐蘭!」
私の後ろからぴょこっと顔を出した蘭も自己紹介する。
「にしても、さっきはかっこ悪ぃところ見せちまったな」
一角が苦笑いして言う。
「そういえば…君たちさっきの男を追いかけていったみたいだけど何してたんだい?」
『妹のね、実践練習の相手をしてもらおうと思って』
「えぇっ!?てことはさっきのと戦ってきたってことかい?!!」
相手をしてもらってきたと言った途端2人は驚きの余り目を見開いた。
「お前ら、バッカじゃねーのか?!!あいつの強さ見ただろ?!この俺がぼろ負けしたんだぞ!」
『ふふっ、確かにあの人は強いけど…ほぼ無傷で帰ってきたってことは?』
私が意味深に笑ってみせると、2人は更に驚いた顔で蘭を見た。
「「…ま、まさか」」
「勝ったかと言われるとそうじゃないけど…負けてはないから!!!」
2人の熱い視線に耐えかねた蘭はそう叫ぶとぷいとそっぽを向いた。