第7章 更木の剣八
この10年間私たちは、脇目も振らず懸命に修練した。
初めて私たちが夜一さんと喜助さんに出会った時から、蘭は夜一さんに憧れ、修練の中でも特に白打と歩法の練習に力を入れていた。
時々遊びに来る夜一さんと喜助さんにも教えられながら、私の教えをよく聞きよく努力していた。
妹だから言うわけではないが、贔屓目に見ても、上位席官クラスなら対等以上に戦えるくらいには強くなったと思う。
なんたって蘭の歩法と白打の技術は夜一さんのお墨付きなのだから!
更木さんの剣が蘭を切り裂いた、と思った瞬間だった。
「……っ?!」
更木さんが切ったのは蘭の羽織りだけだった。
「隠密歩法“四楓”の参『空蝉』!!」
更木さんが流魂街ではほとんど、いや全く見ることがないだろう瞬歩に気を取られている間に瞬歩で素早く後ろに回った蘭は、そのまま更木さんの首元に刀を突きつけた。
「私の…勝ちですね」
「……ククッ…ハハハハハハッ!!!!!!」
暫く呆気に取られていた更木さんがいきなり笑い出す。
「てめぇの勝ち?なに寝言言ってやがる、俺はまだ死んじゃいねぇぞ!!」
更木さんはそう言うと首元に突きつけられていた蘭の刀を素手で鷲掴みにして、再び蘭に斬りかかった。
「…っ!」
間一髪で直撃を間逃れた蘭だったが、その頬からは血がツゥと一筋流れた。
「…今日は良い日だ、強ぇやつにこんなに会えるなんてよぉ……せっかく楽しくなってきたんだ!もっとやろうぜ!!それとも何か?俺に勝つ自信が無いのか?!」
更木さんが不敵に笑う。
「そんなに戦いが好きなら……いいですよ、完璧に負かせてみせる!」
蘭も頭に血が登っているのか、更木さんの挑発に完全に乗せられてしまっている。
結局、私がでないとダメなのね……